岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは
サッカー日本代表監督の岡田武史氏の公演より(早稲田大学の特別講演)
監督の仕事とは、「決断する」こと
答えが分からない問題を、たった1人で全責任を負って決断しないといけない。
全員が反対しても、たった1人で全責任を負って決断しないといけない。
大事な決断(W杯出場、優勝が決まるか)だったらとても怖い。
考えに考え、論理的に考えても答えは出ないが、必死に考える
「どうやって決断するか」といったら“勘”
「相手のディフェンスは背が高いから、ここは背が高いフォワードの方がいいかな」とか理屈で決めていたらダメ。
こいつ(を使うん)だ、という「勘」
本当に開き直って、素の自分になって決断できるかどうか
座禅でいう“無心”。
無の心なんて簡単になれない。
自分の弱さを知っているから、できるだけ邪念を入れないためにいろいろやる。
手っ取り早く無心になる方法が1つ、どん底を経験すること。
明確な共通した目標を持つこと
「このチームはこういうチームなんだ」という“フィロソフィー(哲学)”を作る。
「目標設定って大事だ」と思っているでしょうが、今みなさんが思っている10倍、目標は大事。
目標はすべてを変える。
一番上の目標をポンと変えると、オセロのように全部が変わる。
本気でチャレンジすることは、生半可なことではない。犠牲が必要。
本気で目指すということは半端じゃない。
Enjoy
大人になってくると、「今、ちょっとボールいらない」となってくる。なぜか?
「プレッシャーが強いし、ミスをしそうだ」ということで守りに入っているから。
しかし、それでうまくなった選手を見たことはない。
相手を恐れておどおどプレーしたり、ミスを恐れて腰の引けたプレーをしたりする姿は絶対見たくない。
みんながピッチの上で目を輝かせてプレーする姿を見たい
Enjoyの究極は、自分の責任でリスクを冒すこと。
日本の選手は「ミスしてもいいから」と言ったら、リスクを冒してチャレンジする。
ところが「ミスするな」と言ったら、途端にミスしないようにリスクを負わなくなる。
「ミスするなよ」と言われながら、いかにリスクを自分の責任で負えるか、それが本当のスポーツのEnjoyだ。
Enjoyするためには「頭で考えながらプレーしない」
脳の新皮質で論理的に考えながら自転車には乗れない。
スポーツというのは旧皮質でやる。
練習では考えてやるが、「試合では頭を使わず、自分が感じたことを信じて、勇気を持ってプレーする」それがEnjoy
our team:このチームは誰のチームでも俺のチームでもない。お前ら1人1人のチームなんだ。
コンサドーレ札幌で残り時間10分、0対1で負けている時、
ベンチの前を通ったサイドバックの奴が、ベンチの僕の顔を見て走っている。
「今、チームは負けていますけど、僕は監督に言われた役割はしっかりやってまっせ」とアピールしている。
怒りが沸いてきた「お前がどんだけ役割やっても、チームが負けたら一緒やないか」と。
会社の商品が売れないで倒産しそうな時に、「僕は経理ですから」とか言っていたらダメ、どんなにすばらしい計算をしても会社が倒産したら一緒。
自分のチームを「キャプテンが何とかしてくれる」「監督が何とかしてくれる」と思わせてしまっている。
「違う。お前が何とかするんだ、このチームを」ということ。
人を変えることは簡単ではない
「教えてくれない」「育ててくれない」と何でも他人任せの人がいます。
人を育てるとか変えるとかそんなことできない、本人が本気になって変わろうとしない限り。
「何でもやってもらえるもんだ」と思っている人が多い。
「いろんなことを人にやってもらうんじゃなくて、自分でやらないといけない」という意味をour teamという言葉に込めています。
do your best:チームが勝つためにベストを尽くせ
予定が変わるとマネージャーは大変なのですが、変更することは当たり前。
「お前の仕事がやりやすいためにチームはあるんじゃない。チームが勝つことにこだわれ」ということ。
concentration:集中する
今できることに集中しろ
勝負の鉄則「無駄な考えや無駄な行動を省く」
考えてもしょうがないことを考えてもしょうがない。
今できることをやらないと、目標なんか達成できない。
選手が今できることは何か
日ごろのコンディション管理
集中したすばらしい練習をする
試合でベストを尽くす
運というのは誰にでもどこにでも流れている。
それをつかむか、つかみ損ねるか。
つかみ損ねたくなければ、常につかむ準備をする。
自分でつかみ損ねていて、「運がない」と言っている人をいっぱい見てきた。
勝負を分けるのは往々にしてそういう小さなことの積み重ね
improve:今を守ろうとするな。常にチャレンジ
チャレンジしていくと必ずそこに壁が現れる。
その時に「絶対簡単にあきらめるな」
壁は邪魔をするために現れてきているわけじゃない。本気で目指しているかどうかを試すために出てきている。
communication:お互いを知る
「俺はお前を見ているよ」ということを伝える。お互いを認め合う。
認め合ってもらうために、自分を認めてもらう努力をすること。
究極はあいさつ