会計の世界史

イタリア、イギリス、アメリカ、500年の物語

簿記と会社の誕生

 15世紀イタリア
 銀行革命

 15世紀イタリア
 簿記革命

 17世紀オランダ 
 会社革命

財務会計の歴史

 19世紀イギリス
 利益革命

 20世紀アメリカ
 投資革命

 21世紀グローバル
 国際革命

管理会計とファイナンス

 19世紀アメリカ
 標準革命

 20世紀アメリカ
 管理革命

 21世紀アメリカ
 価値 革命

———-

簿記と会社の誕生

———-

15世紀イタリア 銀行革命

公証人
家族内での相続や商売上の約束などを公の記録して残す職業
残すために必要な「紙」は当時高価だった

商人
遠い国から国へ品物を交換、運搬する危険をともなう仕事

勇敢な船乗りリズカーレが「リスク」の語源
リスクは避けるものではなく挑むものだった

リスクの高い商人のために開発されたしくみが「バンコ(銀行)」
現金を持ち歩かずに旅ができる

ヴェネチア(ヴェニス)の商人は造船技術、海図、羅針盤などで地中海貿易で活躍
イタリアはインド、中国とヨーロッパ各地を結ぶ中継地点

通貨両替から為替手形取引へ

バンコは銀行間でネットワークを構築
ネットワークの利用手数料で儲ける

銀行の利息(ウズーラ)はキリスト教では禁止
利息ではなく補償(インテレッセ)としたことでinterestが「利息」の語源となった

イタリア商人とバンコの規模が大きくなったことで記録の必要性から「帳簿」が生まれた

ヴェネチアでは国が船舶を民間に貸し付けており、その際詳細で正確な帳簿が付けられていた
正確な帳簿で利益を明らかにできる
ヴェネチア式簿記

———-

15世紀イタリア 簿記革命

商売の繁栄と大規模化
個人商店から大組織、のちに株式会社へ

ネットワークが拡大したバンコに支店管理という問題がでてくる
権限を分権化し、徹底的に任せる
持株会社のツール

ヴェネチア型 :家族、親族中心、1回ごとの活動
フィレンツェ型:仲間中心、継続的な活動、コンパーニャ(カンパニー)

商人が公証人にたよらず自ら記録を残す「簿記」
簿記のメリット
・対外的な証拠になる
・利益を明らかにできる
取引や分前のトラブルを回避できる

年間の儲け :フロー情報
決算時の財産:ストック情報

———-

17世紀オランダ 会社革命

貿易の主役はイタリアからオランダへ

ポルトガルのバスコ・ダ・ガマが新航路発見
ポルトガルとスペインが貿易の主役に
スペイン(カトリック)とオランダ(プロテスタント)間で独立戦争
勝利したオランダ、アムステルダムに商人が集まる

商人とともに情報が集まる
多くの取引が行われ市場(マーケット)ができる
さらに商人と情報が集まる、好循環

チューリップ・バブル

東インド会社がオランダに設立
株式をアムステルダムの取引所で売買=世界初の証券取引所

組織の規模が拡大、資金調達のため見ず知らずの人々(ストレンジャー)株主
このため、経営の仕組みにも所有と経営が分離されるという変化
・儲けの計算
・出資比率による分配

ヴェネチア型 :家族、親族中心、1回ごとの活動
フィレンツェ型:仲間中心、継続的な活動、コンパーニャ(カンパニー)
オランダVOC型 :見ず知らずの人々・ストレンジャー株主

複式簿記で正確な利益計算と分配を行う
株主に対する儲けの報告( account for)が会計(accounting)の語源

・有限責任で株主をつのる
・正確な利益計算と配当による利益(インカムゲイン)
・証券取引所での売却による利益(キャピタルゲイン)

しかし

・ずさんな会計と報告
・高すぎた配当
・内部の不正や盗難の横行

によりオランダの商人は没落していく
これを教訓に

・財務会計制度の改善と管理会計機能の充実
・コーポレートファイナンス理論の構築
・コーポレートガバナンスの整備
が進む

———-

財務会計の歴史

———-

19世紀イギリス
利益革命

イギリスで燃料革命、木材のから石炭へ
そして蒸気機関を発明
蒸気機関車の登場
港町リバプールと工業都市マンチェスターを結ぶ鉄道が開通

鉄道会社は初期投資に莫大なお金がかかる
・多額の資金の調達、運用 :財務会計の発達
・遠隔地の運行ダイヤの管理:管理会計の発達

マンチェスター商人:工場への再投資(堅実)
リバプール商人:鉄道会社への投資(ハイリスクハイリターン)

減価償却
莫大な固定資産をかかえつつ利益を計算するため

減価償却によって
儲けの計算「収入ー支出=収支」(現金主義)から「収益ー費用=利益」(発生主義)へ

過去(購入済み)が 減価償却 なら
未来(購入予定)は 引当金 とする

発生主義によって 粉飾 も行われた

発生主義はもともと収支と利益が一致しない
このため 黒字倒産 が起こる(利益があってもお金がない)

会計は「自分ため」から「他人のため」に

———-

20世紀アメリカ
投資家革命

アイルランドのジャガイモ飢饉により、移民がアメリカ大陸へ
新興国アメリカは投資の対象としても注目される
これら投資家への情報提供を行ったのが会計士
もともと会計士の主な仕事は破産処理だった
破産しないための会社の状態や決算書が正しいかどうかチェックを行う 監査 へ
会計士はじょじょにアメリカに拠点を置くようになる
乱立した鉄道会社で経営破綻が増える
決算書から 経営分析 することが流行
情報による不正 インサイダー取引

1929.10.24 暗黒の木曜日 ウォール街大暴落
株価は暴落しても倉庫にはモノが余っているという矛盾から
有効需要をもとにしたマクロ経済学
商業銀行と投資銀行に境界線 グラス=スティーガル法
証券法、証券取引法の制定

公開企業の会計制度
・ルールに基づく決算書
・決算書は監査を受ける
・投資家に決算書を公開(ディスクローズ)する

有価証券報告書の閲覧:EDINET

———-

21世紀グローバル
国際革命

売れる見込みがある:負債によって資金調達
売れる見込みが不明:資本によるほうが安全

ドイツ空軍とイギリスのレーダー
物理的な性能だけに頼るのではなく、情報で優位に立つことで勝利できる
イギリスは通信技術によってドイツに勝利

鉄道から工業化と情報化

1990年代、国際を表す言葉は「インターナショナル」から「グローバル」へ

それまで国ごとだった会計ルールから世界共通の会計ルールへ
会計基準の国際化
原価主義から時価主義へ
アメリカとイギリスで主導権争い
時価主義:英米(投資向き)
原価主義:日独(製造向き)

1999年 グラス=スティーガル法の撤廃
グローバルな金融ビジネスが台頭
投資市場に「ファンド」と「M&A」が増加

最近のファンド:配当や株価といった利益だけでなく、経営に関わろうとする
物言う株主

国によって 利息、税金、償却費 などが違うため
それらを控除する前の数値「キャッシュへの回帰」>キャッシュフロー計算書

———-

管理会計とファイナンス

———-

19世紀アメリカ
標準革命

南北戦争で登場した「鉄道と銃」
大陸横断鉄道

イギリスの鉄道:直線が多い(土地代が高いから)
アメリカの鉄道:曲線が多い(土地代が安いから)

連結決算
アメリカの鉄道会社で初めて登場
イギリスよりも広大な規模のため標準レールを用い、エリアごとに 管区 を設定
一気に路線が拡大することにより同質的な都市が同時に発生
製造業は同質の製品を大量生産する方向へ(経験豊富な職人もいない)
原価計算を経て管理会計へ
人件費と労働者の管理へ

テイラー式会計システム
文書フォームを標準化
工場の原価から損益まで正確かつ迅速に計算

大規模な工場では減価償却費を製品にどう配賦するかの計算が難しい
原価計算は製造業の生命線
正しい原価が出ないと売価も利益も出せない
たくさん作るほど原価は下がる、薄まり効果

1849年カリフォルニアでゴールドラッシュ
金を掘る人々に商売することで成功
金がたくさん出回れば金の価格は下落、儲からない

———-

20世紀アメリカ
管理革命

規模から効率へ
コスト削減のための標準原価計算

マッキンゼー教授による「管理会計」
予算管理、何台売れるかの予測、何台作るべきかの計画
予算の本質は未来の数字計画=数字シミュレーション
コストを変動費と固定費に分け、売上に比例する限界利益だす

セグメントを分ける、製品別の採算性
・売上をわけることはできてもコストを分けることが難しい
 コスト(原材料費、人件費、減価償却費、本社費、、、)
・どれだけ利益を出せばいいかのハードル設定
 利益率や減価率だけでなく、投資に見合った利益という視点

デュポン公式
ROI(Return On Investment)投下資本利益率
利益/資本 = 利益/売上 X 売上/資本
(資本利益率)(利益率)  (回転率)

利益があっても黒字であっても、投資に見合った利益がなければ撤退する
セグメントごとの利益と資産の計算が必要、難しい
管理会計は配賦などどう振り分けるかで計算が変わる
正解のない難しい問題、自由な発想が必要

管理家計ができることで事業部制組織ができる

セグメントで「分け」、予算の本質「計画」し、予算・実績比較で「評価」
セグメント別業績評価

バランスシート圧縮
収益に貢献しない財産を圧縮し、収益を生む資産の効率を上げる
財務体質の改善、無駄を削減し業務管理意識を向上

財務会計、管理会計、ルーツを理解しつつ常に現代的な見直しが必要

———-

21世紀アメリカ
価値 革命

投資の際にコストに注目するかリターンに注目するか
コスト:原価、リターン:時価とみることもできる

情報化社会の隠れた資産
金(流動資産)と物(固定資産)に表れない資産
優秀な人材、独自のノウハウ、強力なネットワーク、など
まだ会計上明確にされていない

コーポレートファイナンス
会社の価値を明らかにすること
会社の将来キャッシュフローを予測し向上させる

帳簿を作る簿記
決算書を読む財務会計
未来を描く管理家計&ファイナンス

人間の業績を評価するのはモノの評価よりはるかに難しい
誰がどれだけ貢献したかを測る難しさはまだ解決されていない

儲けるだけだなく、社会や従業員にとってより良い会社になれるか
新たな価値の定義と創造が必要

田中靖浩

関連商品「会計の世界史」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

「読書」の記事

おすすめの記事