愉しみながら死んでいく

思考停止をもたらすテレビの恐怖
ニール・ポストマン

「もっと!」で紹介されていたので読んでみた。
この本は日本語訳は2015年に出版されたが原書は1985年に出版された。
当時はインターネットも携帯電話もない時代だが、ここで述べられるテレビへの懸念は「画面をみる」という点でインターネットや携帯電話にも通ずるものがある

人間の底知れない欲求
・試聴できないほどの番組
・思考の脈絡を破壊
・物事の真実を見失うほど情報過剰
・愉しんでいるうちに何を失ったことに気づかなくなる

「では、、、次に」

オーウェルとハクスリーの予言
オーウェル:支配する人間の出現(禁書を行う人間)
ハクスリー:人々が支配されていることに気づかなくなる(本を読みたいと思わなくなる)

コミュニケーションに関わる情報媒体の変化(印刷、電信、ラジオ、テレビ)は、利用者の認識機能に偏りをあたえる
人間の認識機能を戦場に、情報媒体が陣地取りを行った

メタファー:比喩、たとえ
パブリック ディスコース:公共向けの意思伝達

発話と聞き取り能力
メールでやりとりする相手とは、直接会話を楽しむ
会話は生きていく上で大事になスキル

テレビは他の家電と比較にならないほど暮らしに溶け込んでいる
そのテレビが認識機能へあたえる影響は広く深い
エンタメだけでなく政治、宗教、芸術、スポーツなんでも

画面での感動は、球場での実体験より短命
短い時間しか記憶されず消滅する

———-
情報媒体はメタファーである

政治家は管理能力よりも容姿、有権者=視聴者がそれを求めている
テレビは言葉でなく画像によって会話する(話し言葉の書き手がいなくなってきた)

テレビは断片化された情報の集まり
印刷物と電波の違いは、公共向け情報伝達の内容と意味も変えてしまった

時計の役割、時計の示す世界観とは
ルイス・マンフォード(文明批評家)
時計は、秒や分という「製品」を作り出す
人間に関わる出来事から時間を分離し、数学で計測できる因果連鎖にした

文字
人の声や考えを目で見られるようにした
知識という新しい概念を作り出した
書かれた言葉には単なる思い出よりも強い力があり、現在に過去を再生し、懐かしい記憶ではなく、呼び覚まされた幻覚のように輝く強烈さを与える

同じようにテレビの役割、テレビの示す世界観とは、を考える

技術を文化に導入するのは、人間の能力を拡張することではなく、人間の思考法、文化の内容を変えていくこと

———-
認識機能としての情報媒体

テレビがガラクタを作り出すことが問題なのではない、
問題は
重要でないことが重要だと伝えられてしまうこと
テレビが取るにたらないことにこだわるようになること

テレビによって創り出された認識機能は印刷物に基づいた認識機能よりも劣る
現代文化はテレビによって情報、観念、認識機能の形式が与えられる

テレビの価値
慰めや楽しみの情報源としては価値を認める

言葉中心の文化と画像中心の文化の違い
アインシュタインで思い浮かぶのは顔写真で言葉ではない

1800年代アメリカ
空間を移動することに関心をいだく
情報は人間(鉄道)の速度で伝わる

電気による情報伝達、モールス信号
州の境界を消し、地域を消滅させ、大陸を情報網で包み込み、アメリカ人の意思を統一して伝達する可能性を示した

すばやく伝えられるようになったが、それほど重要な情報が常にあるわけではない

電信は時間が散乱し注意力が欠如した世界を生み出した
電信機の威力は情報を移動させる機能にある
本とは正反対
本:情報や考えを蓄積したり、吟味したり、整然と分析することに優れた媒体、しかし時間がかかる

電信;事実を次から次へと流し込み、意識から事実を消し去る
電信機が使う言語「見出し」
見出しは人を扇動し、断片しか伝えず、人格を持たない、脈絡がない
ニュースはスローガンの形式をとり、興奮を与えるだけで、受信すると忘れられた

写真
文章構造がない
空間と時間を断片にして、誰がいたか、何が起こったかを記録する
記録は確かだが意見を述べているわけではない

テレビの問題は、あらゆる番組が楽しいものとして提供されること
ニュース番組がエンタメになっている

音楽の有無も重要、演劇効果

テレビはパフォーミングアート(肉体表現芸術)を要求する
考えることはパフォーミングアートではない
視聴者を混乱させ飽きさせる
不確実な印象や結末のない印象を与えてしまう

———-
「では、、、次に」

単語と単語を結びつけず、すべてを他のから分離してしまう接続詞
これまでのことと、これからのことは関連がないことを意味する
なぜこうなるか
テレビが1秒、1分といった時間を切り売りしているから
言葉より画像を使うから

どのニュースもテーマ曲で始まり、テーマ曲で終わる
エンタメ化されたニュース

視聴者が次のニュースを見るよう仕組まれているのは、ニュース番組が構成されているフィルムの長さによる
ニュース番組の理想
すべてをごく短時間で行う、視聴者の注意を引きつけすぎず、多彩さ、目新しさ、動作、場面展開によって、つねに刺激を与える
一口サイズぐらいの構成、複雑さをさける、繊細な感性は不要、思考の代わりに視覚刺激を与える

テレビの情報は偽情報
偽情報:置き換えられた情報、一貫性のない情報、断片化された情報、うわべだけの情報、(誤った情報のことではない)
矛盾した情報も、文脈を消すか、文脈を断片化すると矛盾はなくなる
(矛盾は連続した一貫性のある文脈が前提)

伝達方法が違えばメッセージも違ってくる

テレビは生活の中の一部、食事をしたり居間で

テレビの中で政治は広告、見せかけること

商品調査から市場調査
商品価値を高めることより、消費者に価値を感じさせること

CM
他にないほど短時間で終わる表現、瞬時性

頑固や無知によって無関心になったのではなく、関連性を見失う感覚によって無関心になり、歴史を衰退させていくことになる

テレビを見るとは
情報媒体を見ている、情報を単純化し、実態をなくし、歴史もなくし、文脈もない形式に変える

ハクスリーの警告
・人間がつまらないことで気を紛らすようになった
・文化生活がエンタメの繰り返しになった
・公的会話が幼児言葉になった
・人間が観客になり、公共事業が寄席演芸になったとき
文化は消滅する

関連商品「愉しみながら死んでいく」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

「読書」の記事

おすすめの記事