もっと!

愛と創造、支配と進歩をもたらす
ドーパミンの最新脳科学

———-
恋愛から友愛へ

ドーパミンの活性は快楽の指標ではなく、予想外のこと(可能性と期待)に対する反応
私たちの脳は予想外のものを希求し、ひいては未来に、あらゆるエキサイティングな可能性がはじまる未来に関心を向けるようプログラムされている
情熱は、可能性を夢見る時に高まり、現実に出会した時にしぼむ

身体の近く・遠く
脳は外の世界を別々の領域に分けて処理している
・身体近傍空間:近く、手の届く範囲、現在・現実
・身体外空間:遠く、手の届かない範囲、未来・可能性の世界

ドーパミン
・すべての化学物質を支配する、期待と可能性を司る
・未来に手に入れられる資源を最大化し、
・より良いものを追い求める

手の届かないもの、現実でないものだけが魅力を発揮する
魅力は一種の嘘

友愛を司るH&N(ヒア、ナウ)
・ドーパミン:未来志向、期待の快楽
・ヒア&ナウ:現実志向、感覚や感情から生まれる喜び
・ドーパミンと打ち消し合う

報酬予測誤差
ドーパミンは予想した報酬と実際の報酬との差に対する反応

恋愛(ドーパミン)で始まり
友愛(ヒア&ナウ)にいたる

———-
依存症・「欲求ドーパミン」の駆動力

人が延々と求めるものの果て=幸福
人間のすべての行動は幸福を目的としている

生物にとって、未来に関する最重要目標は、生きていること
ドーパミン系は生かし続けることに執着し、より良い環境を求める

未来は現実ではなく、頭の中にしか存在しない

車を購入する前の高揚感は、手に入れたあとは長く続かない
欲求回路は欲しがるだけその期待を保証しない
欲しがって手に入れても幸せになるとは限らない
すぐにもっと欲しくなる
欲するシステムと好きになるシステムは別

麻薬などの薬物は、食欲や性欲など自然界のどんな報酬でも敵わないほど強い
自然な欲求は満足を知るが、薬物は満足を知らない

ラットの実験でドーパミンを活性化させると
砂糖水を欲しがる量は増えたが満足度はあがらない
ヒア&ナウを活性化させると
同じ量でも満足度があがった

欲求(ドーパミン)は強力
満足(ヒア&ナウ)は脆弱
この差が「人生において、強烈な喜びは欲求よりも体験する頻度が少なく、長続きしない」理由
欲求と満足に作用するドラッグは依存性がひときわ高い

ニコチン:他の薬物と違う特徴をもつ
ドーパミン分泌を促し安価で入手しやすい
衝動的な使用(ニコチンの欲求)以外、何もしない
初めて与えられたときにはそれを好まない
マリファナのように恍惚としない、アルコールのように酩酊しない、覚醒剤のように高揚しない
ニコチンの渇望に対する不快感を和らげるだけ

依存症は性格や意思の強弱とは関係ない
過剰な刺激により、欲求回路が病的な状態になったときに起こる
何が好きで何が嫌いかの判断より、ドーパミンの力のほうが強い
本当に自分が好んでいるか、自分にとって良いものか、自分に害のあるものか、という観点から切り離される

ドーパミンが活性すると未来への期待値が上がる
ギャンブルで得られると期待する金額が上がる、など

依存する理由
・入手のしやすさ(価格、入手方法、後ろめたさの有無など)
・習慣化

ゲームの依存率はギャンブルの5倍
青少年が多い理由
脳が発達しきっておらず、前頭葉(分別の判断)に損傷を受ける
ゲームの本質は想像で、現実嫌いのドーパミンが果てしない可能性を満喫できる
美しいグラフィック、見たことのない世界や生物、戦闘の興奮、アイテムの入手、レベルアップ、自分が主人公であることの満足感など
ゲーム開発者はゲームから送られるビックデータを基に、より依存性の高い仕掛けを組み込む
宝石の入っている宝箱の割合は25%:ユーザーが興味持ち続けられる魔法の数字
他者とプレイすることでヒア&ナウの満足感も満たしてくれる

———-
支配・「制御ドーパミン」の達成力

ドーパミンの利点
集中力があがりモチベーションと興奮を与える
より良い未来にひたすら意識を集中させる

ドーパミンに対抗できるのはドーパミン制御回路
欲求が導く未来より、さらに先の未来を想像することで長期的な計画を立てることで目先の欲求を抑えることができる
冷静で無情で計算高く、目標達成のためならどんなことでもする
欲求ドーパミンの興奮を受け取り、選択肢を査定し、手段を選び、求めるものを手に入れるための戦略を練り上げる
状況を支配したことから生まれる快感

想像した未来を結実させるためには、現実世界と格闘しなければならない
知識だけなく、粘り強さが欠かせない
その粘り強さを与えてくれるのが未来の成功を司るドーパミン
ドーパミンがなければ努力も存在しない

自己効力感
効果があり成功できると信じるちから
早い段階で成功に恵まれたときほど粘り強さは増す
ダイエットを初めてすぐに体重が減った、ギャンブルでいきなり儲けた、など
薬物などで病的に自己効力感が高まると、誇大妄想や何の根拠もなく不可能なミッションの成功を信じる

非言語的な行動が相手に与える印象
身体を大きく広げて広い空間を占めると支配的な印象を与える
身を縮めると服従的な印象
相手が成功を確信していると、私たちは無意識にそれを感じ取り、相手の邪魔にならないようにする
成功の確信=圧倒的な自己効力感の表現
自信のある相手には逆らわない、というふうに進化してきている

人間関係には「代理的」と「親和的」の両方がある

代理的関係
目標達成のために形成される人間関係
他者が自分の延長として機能
冷静でよそよそしい
周囲の環境を支配し、利用可能な資源から最大限のものを引き出す
制御ドーパミンの領域

親和的関係
他者と一緒にいる快楽
愛情深く思いやりがある
社交的で他者に助けを求める

真の科学者になる秘訣(ラルフ・ウォルどー・エマーソン/詩人)
「出会う人すべてがどこかの時点で師となり、自分はその人から学んでいると考えること」
あらゆる人に知的価値を見いだしその人から学ぼうとする=代理的人間関係
相手を「師」として敬意、謙虚、恭順という形をとった、自己服従による支配

服従による支配
相手に合わせ、相手の希望に添うことで自分の望む目的を達成する
服従的な行動が社会的地位の高さとされることもある:マナーの厳守、社会的慣例の尊重、相手を敬う会話など

支配的行動は個人の不安や教育不足に由来する

人類ではじめて月面歩行を成し遂げるほどのドーパミン
それほどのドーパミンがある状態は楽ではない
目標に向かって努力しようやく達成しても、すぐにまた、さらに高い目標を求める

ADHDが子供にみられるケースが多い理由
脳の中でもっとも発達の遅いのが前頭葉(分別の判断)で、成人期までほかの脳と完全に接続しない
制御ドーパミンの力が弱いと、長期的な結果を考えず自分の欲しいものを追いかける
おもちゃの横取り、列への割り込み、衝動買い、人の話に割って入るなど

ドーパミンに良心はない
ドーパミンが活性化すると、罪悪感(ヒア&ナウ)が抑制される

「勝利」は薬物と同じように依存性を持つことがある
勝利の後の敗北はつらさが10倍
勝者が欺瞞的行為に手を出す理由は、薬物依存症患者が薬を使う理由と変わらない
欺瞞は人生を破壊すると自覚していても欲求回路は気にせず要求する
制御回路、理性が重要

暴力
求めるものを手に入れるための計算された威圧的な手段
支配の究極の道具
2種類ありシーソーの両端のようなもの
・目的があり計画的、ドーパミン作動性、感情的要素は小さい「冷たい暴力」
・激情による自然発生、本能的、

感情(恐怖、怒り、圧倒的な欲求など)は計算された行動の邪魔になる
支配戦略のひとつ;相手の感情を刺激し、計画実行損わせる、スポーツでは挑発的会話など

危機をくぐり抜けられる者
・冷静さを保てる
・利用可能な資源を把握できる
・行動計画をすばやく立てられる

ドーパミンとヒア&ナウの相互作用
危機に直面すると、まず恐怖などの感情(ヒア&ナウ)が働く
こここでドーパミン系がシャットダウンされずに理性的計画を立てることが重要
危機が去ると再び震えや涙などの感情が呼び起こされる

感情分離スコア
・高い:冷静、社会的に孤立、人間関係で復讐心を持ちやすい
・低い:人に与えすぎ、利用されやすい
大抵の人は偏りなく中間
反応は近傍空間に関わる
・近い:ヒア&ナウ、温かな感情
・遠い:抽象的思考、合理的で無感情
どんな時に誰を助け、誰を助けないか
・トロッコ問題
・自動運手プログラム

ドーパミンとヒア&ナウは反対方向に作用し、バランスを生み出している
脳には対立し合う回路が存在する
他者に人間らしく振る舞いながら、自分自信の生存も守ることができる
バランスが必要不可欠

ドーパミン
・欲求(情熱)、粘り強さ(意思)の源
通常は2つは協力して働くが、自分に不利益な欲求の場合は制御ドーパミンが働く
欲求を抑えるもの
・意思
 最初に働くのは意思
 ただし、意思は短期間で疲れてしまう、筋肉のようなもの
・計画、戦略
・長期的な結果を想像する抽象的思考
・心理療法(1,2,3)

1) 動機づけ強化療法(欲求ドーパミン)
より良い人生を望む「欲求」を刺激しする
ことわざ「他人の言ったことは信じないが、自分の言ったことは信じる」
会話により相手からより良い人生に関わる話を引き出す(自分で言う、自分から言ってもらう)
反対意見には異論を唱えず話題を変え、上記の会話になるのを待つ(否定しない)
ポジティブな発言を自然に自らより多く引き出す

2) 認知行動療法(制御ドーパミン)
計画能力による抑制
欲求が引き起こされる「合図(トリガー)」を知る
合図とは欲求を連想させる人、場所、物など、自覚がない場合もある

3) 12ステップ促進療法(ヒア&ナウ)
同じ仲間、グループへの参加
仲間を裏切ることへの罪悪感(ヒア&ナウ)は動機づけの強力な要因

依存症は精神疾患より治療が難しい
欲求する力強さに巧妙さも兼ね備える(意外なトリガーで誘惑する)
依存症はDNAまで変化させる

———-
創造と狂気・すごい発想が生まれる源

創造力:地球上でもっとも大きな潜在能力

サリエンシー:重要度、目立ちやすさ
自分にとって重要なものはサリエンシーが高い
サリエンシーが高いものは目につく(サリエンシーの低い他人には目につかない)

サリエンシー機能が働かない、働きすぎの障害
働かない:注意できない、危険を認識できない
働きすぎ:ささいなことが気になる、妄想につながる
統合失調症:無視すべき普通のものにサリエンシーを与えてしまう(潜在抑制機能障害)

私たちは重要でないものを無視し、注意力を無駄に使わないようにしている
新しいものが豊富にある環境では、重要事項を選び出せないことがある
それが快感か恐怖かは状況や人によって異なる
・混乱
・時間、場所、人物がわからなくなる(見当識の低下)
・カルチャーショックなど

脱線思考
ある思考が別の思考にたちまち取って代わる
抑制できず口に出してしまう
意味がわからないこともない
精神疾患の患者と同じように、芸術家や詩人、科学者、数学者などにも見られ創造的思考にも必要

モデル構築

身体近傍空間
・五感で体験できる
身体外空間
・味覚、触覚、嗅覚、聴覚、視覚の順で失われていく
・目に見えないほど離れたものを認識するのが想像力

モデル
・世界を理解しやすくするために作った想像上の世界
・モデルに含まれるのは構築者が重要と信じるものだけ

モデルは強力な道具だが、思考の型にはまり改善するチャンスを逃してしまうこともある
新たな視点で見るためには既存のモデルを壊さなければならない

人が創造的になる時
・統合失調患者と似た振る舞い
・これまでは重要でないもの、としていたような判断・抑制をしない
・無関係とみなしていたものにサリエンシーを付与する

比喩
世界を思考する際のきわめてドーパミン的な方法
一見無関係な概念同士の似ている要素を結びつける
無関係に見えていたふたつのものにつながりを見出す能力は創造力の重要な一因


天才と狂人の中間地点
外部からの感覚インプットが遮断さるためH&Nが低下し、ドーパミンが活性する
奇妙なつながりを見出す
些細なこと、気にしていなかったことが目立つ
思考が普段より流動的
論理の支配に縛られない
主題があちこちに飛び回る
夢を見たあとに物語を作ると奇異性が高い
夢と現実のはざまにいるときこそ、最高の創造的思考を経験できる
夢はきわめて視覚的な現象
『睡眠委員会 創造的に問題を解決する芸術家、いかにして夢を利用しているか』

夢による問題解決
自分にとって重要な問題を選ぶ
寝る前に問題について考える
そのとき視覚イメージとして思い描く
目が覚めたらすぐに夢の内容を書きとめる
意味がわからなくても見たまま書く

天才
大量のドーパミン:問題に継続して集中する力、自分だけの世界
H&Nが抑制される:他者への共感、対人関係が苦手
未来の資源を最大化することに集中し、いまここにある状況を味わうことを犠牲にしている
感覚的体験よりも抽象的思考を好む
人類を愛すること隣人を愛することは違う
「人類を愛しているが、人間を憎んでいる」アインシュタイン

快楽主義のパラドックス
自分のために幸福を追求する人はそれを得られず
他者を助ける人こそが幸福になれる
利他的行動には幸福や健康、長寿との関連性がある
他者を助けると細胞レベルで老化が遅くなる

説得の技法と神経科学
決断して行動を起こすポイント=欲求ドーパミン回路と制御ドーパミン回路の交差点
人を不合理な判断に導く時には、欲求ドーパミンとH&N経路の両方を活用できる
効果的なのは恐怖、欲望、同情

『愉しみながら死んでいく 思考停止をもたらすテレビの恐怖』ニール・ポストマン(メディア学者)
政治的議論がテレビの隆盛により衰えつつある
テレビニュースが娯楽の特徴の多くを見つけている
すべてを簡潔に保ち、誰の注意も引かないかわりに、変化と目新しさ、アクションと動きにより絶えず刺激を与える
一度に数秒以上の注意を向けないようにすることだ
(ネットニュースも同じ)
簡潔で刺激的な見出し
長すぎないリード
思索に富むが短い記事
見栄えのする動画
がほとんど
深い分析よりも、簡潔さと目新しさを発達させてきた

サリエンシーの高い見出しはドーパミンを刺激し注意をつかむ
私たちは刺激的な見出しを次々にクリックしては子猫の動画を開くいっぽう
医療に関する長いエッセイは読み飛ばす(医療のほうが生活に深く関わっているのに)

長文ジャーナリズムが復興することはないだろう
お手軽な記事がニュース環境に一層広く浸透し、勝ち残るためにさらに短く、さらに浅くなっていくにちがいない
そのサイクルの行き着く先は
単語さえ安全圏ではない、文字を使った文章の代わりに目を引くものーーー絵文字
われわれば急速に移行しつつある情報環境は「とるにたらないことの追求」

関連商品「ドーパミンの最新脳科学」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

「読書」の記事

おすすめの記事