〆切本

締切りについて、作家の苦悩や編集者との関係から仕事への向き合い方など面白かった。

新聞小説について
書き溜めて置くと、どうもよく出来ぬ。矢張一日一回で筆を止めて、後は明日まで頭を休めたほうが、よく出来そうに思う
夏目漱石

小説 どうしても書けない
吉川英治

書けないときに書かすということはその執筆者を殺すことだ。
いい原稿が集まっている雑誌には、必ずどこかに清朗な人格者がひそんでいるにちがいない
書き上げてから一週間押し入れにいれてその作品のことは忘れる。そのあとに読み直すと欠点が見えてくる。
横光利一

断ろうと思えば断れたのだが、こういう中間小説の仕事をしないと生計がなりたたない
高見順

書いている時よりも、書く前が苦しい
乾いた手ぬぐいから水を絞り出すような苦しさ
遠藤周作

締切りが迫ってくると寿命の縮む想い、比喩ではなく本当に胃と心臓にこたえる
内田康夫

原稿が遅れるいいわけをどうしようかずっと考えているので、原稿を書く暇がない
高橋源一郎

編集者仲間では、ぼくのことを陰でおそ虫とかうそ虫とか呼んだ
記者もサラリーマン化して、紳士だが個性に乏しい
作家は編集者によって瑠璃にも玉にもなるから、それには強い個性の衝突がなければならないと思う
手塚治虫

知識で書くタイプじゃない男は、
何となく生きていかなきゃ書けない。締切りというよりは、むしろ「生きろ」って言われたほうが書ける。それにしちゃ一生っていうのは短い
色川武大

締切りが過ぎると、手のひらを返したように性格が変化するのは、サラ金の取りたて業者以上である
嵐山光三郎

編集者としての実務能力は、常識に属することも多いのだが、経験を積んだ編集者は
プロフェッショナルだなあ
と思わせてくれる能力を必ず持っている
阿刀田高

締切りに遅れるのは筆者のほうが悪い。しかしこちらも申し訳ないと思っているのだ。その気持ちをさりげなく救ってくれる編集者がやはり有難い
原稿というのはどんなに世の中が変わっても筆者と編集者の心の通いあいから生まれる共同作業なのだ
川本三郎

締切りというのは著者にとっては集中力を生みだすための仕掛けのようなもので、締切りなしでは書きにくいものだが、それでも遅れることがあることはやむをえない。原稿は時間をかけたらできるという性質のものではないからだ。
高田宏

ドフトエフスキーのエピソード
無理難題な締切りのため、一緒に仕事をした速記者が後の伴侶となり、晩年の傑作を生みだす陰の力となった
原卓也

アイデアが出るか出ないかは、まるで神だのみである。実際自分でも心細いのだが、
アイデアはとっくの昔に尽きているのに、それ以後もなんとかひねり出したのだ。
まあ、なんとかなるだろうと頼みにならぬことを頼みにして図々しく構えている。いままで倒れなかったからこんども大丈夫だろう、と薄目をあけて地震を味わっている心境である
山田風太郎

やり直しを嫌ったら、よい仕事はできない
三浦綾子

そもそも、仕事を依頼するときに、期日や報酬を明らかにした契約がなされていない。原稿が遅れた場合、いかなるペナルティもない、というシステムなのだ。
何故、合理化できないのか
(締切り前なら増額、後なら減額という提案)
彼らは締切り遅れの原稿をとる苦労を「美談」のように誇らしげに語る。酔っ払っているとしか思えない
森博嗣

人はなぜ楽観的な予測をしてしまうのか
予測をするとき、ネガティブな情報を過小評価し、ポジティブな情報を過大評価しやすい
過去の行動など具体的な情報を過小評価し、意図やヤル気など抽象的な情報を過大評価しやすい
樋口収

不自由なほうが自由になれる
(決めごとの範囲で工夫するから個性になる。それがないとみんな似たり寄ったりになる)
米原万里

たあいないテレビをみながら食事するこについて
たあいないからいいので、これが充実して深刻だったら消化に悪い
星新一

約束の時間を守るというのは、当然のことのようでいて、なかなか難しい。それができるのは、彼女が、彼の時間について考えがおよぶからで、約束の時間をまもらぬ人は、相手の時間が、どれほど大切なものかわけまえぬからだ
約束も段取り。仕事も生活も段取りである
池波正太郎

締切りを守る作家、守れない作家、守らない作家

締切り過ぎたほうが有難みが増す

編集者放浪記

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