あまちゃんトークイベント
「あまちゃん」プロデューサー・訓覇 圭(くるべ けい)さんによる無料ワークショップが開催されるというので参加してきました。
場所は東京都写真美術館(恵比寿)、ワークショップというよりもトークイベントでした。
1部では司会者と訓覇さんで企画段階のエピソード。
2部からは演出を担当された吉田照幸さんを交えて、撮影や制作段階のエピソード。
3部では会場からの質疑応答
となっており、視聴者からはわからない制作の苦労話からあのシーンの意外な裏話など、あまちゃんをもう一度見返したくなるお話がたくさんありました。
3つの博打
訓覇さんは冒頭で、よく聞かれる質問として「ヒットの秘訣は」に対して「正直わからない」と答えていることを明かしました。
ただ、今回は3つのバクチを打ったそうです。その3つとは
1。場所を久慈市に選んだこと
2。能年玲奈さんを起用したこと
3。アイドルネタの採用したこと
3つとも「必ずヒットする」という保障はなく、それでも決めなければならない。こうした決定はバクチだということです。
ただし吉田さん曰く「訓覇さんはいつもバクチを打ち続けている。ヒットするよりバクチを打ち続けることがすばらしい」とのことも。
以下、語られた内容のメモを3つのバクチごとに分けてみました。
久慈市に選んだこと
・モデルとなる場所を探しに訪れてみて、「都心から遠い」「これといった特徴が何も無い」「本当にここでいいのか」と悩んだそうですがそれでも選んだ理由は、「リアルに距離が遠いことが大事(と思うことにした)」
・「北三陸市」という架空の地名した理由
劇中では土地に対してネガティブなネタもあるため架空の地名にした
実在しないけどありそうな名前(リアルなファンタジー)を真剣に考えた。
スライドで参考に撮影した風景写真などをみせてもらったけど、それだけみると「普通にへんぴなところ」という印象しかなく、それがドラマでは個性的な土地として生まれ変わっているのが不思議でした。
能年玲奈さんの起用
・主役を選ぶ時に、そもそもオーディションを行うかどうか迷った。
・でもキャリアのない子を起用して、物語の中で一緒に成長して行く過程も見せたかった。
・一番恐いのはオーディションで誰も見つからなかった場合で、夜も眠れないほどだった。
・オーディションは2000人分の書類審査で500人に絞り、500人との面接で10人、10人に実際に芝居をしてもらって最終的に1人を決めるという流れ。
・2000人分の書類から選ぶポイントは「写真とキャリア」。能年さんの写真はひどくて「あれは作戦かと思うほど」だった。
・それでも、面接では能年さんが入って来た瞬間に雰囲気で「候補が一人は居た」とホッとした。
能年玲奈さんについては、何かとエピソードを紹介してくれました。
・泳げないのに潜れたという奇跡
・訓覇がいくら注意しても猫背が治らず、しまいには劇中でもそれをネタにしてた。「さかりのついた猫背の雌のサル」
・朝ドラのヒロイン役はたいてい一度は倒れたけど、倒れなかった。根性がある。
・疲れていたと思うが、外にはそれを見せなかった。
・大勢のベテラン俳優のなかで長い期間やっていくには「人間的に愛される」ことも必要。
アイドルネタの採用
・本来、業界ネタのドラマは難しい。
アイドルネタがなぜ難しいかと言う点はあまり具体的に語られませんでした。が、業界では常識的なことらしいです。
その他にもいろいろと制作秘話というか裏話も、、、
ママもアイドル
・タイトルが「あまちゃん」に決まる前まで「ママもアイドル」だった。
全然違うタイトルで、受ける印象も違います。
私は途中から見始めたので、このドラマは主人公が海女さんになるまでのお話なんだとずっと思ってました。だから東京編に入るときは、ずいぶん違和感がありました。
3人の演出
・あまちゃんの演出には主に井上剛、吉田照幸、梶原登城の三人が担当。
・井上は情緒的、吉田はコメディ、梶原は情熱的な演出が得意。
・中でも吉田はこれまでバラエティー番組を手がけていて異例の抜擢。
オリジナル曲1曲でも大変
・劇中でオリジナル曲を1曲歌うには、役者は歌手として完全に1曲を歌えるように、振り付けからダンスや歌のレッスンも行うなど、見えない苦労がある。
サンタは取り扱い注意
・以前の番組で、父親がサンタクロースに扮してプレゼントしてる場面に抗議の電話殺到。サンタ事件とも呼ばれたことがある。
・宮藤は子供の夢を壊さず、大人にはわかるような脚本にした。
・裏の設定として、アキの父親は毎年サンタクロースのメイクをすることでメイクの腕を上げ、ナツが「どちらさまで?」とたずねるほど本物のサンタのようになれる。
プロデューサー、脚本、演出のこだわり
・脚本(宮藤)は、GMTはすべて本当にその地方出身で方言がしゃべれる人間にこだわった。なかなか居なかった。
・演出(吉田)自転車で海に飛ぶシーン。プロデューサ(訓覇)はいらないと思ったが、飛ばして落とすことで心象風景にしたかった。3つの角度を作って直ぐ落ちる、真っすぐ走って落ちる、上昇して落ちる。
前髪クネ男
・ 現場ではやりすぎな感じがあったが、受ける能年の演技でコメディとして成立した
・ クネ男には古田新太がかなり演技指導していた(笑)
最後に
訓覇さんは「バクチ以外のところは丁寧に作った」と言います。
成功の要因に「運」も必要だけど、それは最後の一押しでしかないでしょう。
あまちゃんの成功は誰か一人のおかげでも、何か一つラッキーのおかげでもなく、スタッフ全員が丁寧に仕事を積み上げた結果なんじゃないかと思います。